ストーリー




導入ストーリーを見る

時空列車でのふしぎな出会いからしばらく――。
 課外授業で氣比神宮にいたわたしは、気がつくと見知らぬ場所に立っていた! 
土の道に木でできた家々は、手元の郷土資料にある、
ふる~い敦賀の様子にそっくり。
 途方にくれていると、遠くから聞き覚えのある汽笛の音が聞こえる。
あなたが見上げると、そこにはいつか見た時空列車が空を走っていた――。

 列車は蒸気を上げながら、線路のない道の真ん中で停止する。わたしがそちらへ走り出すと同時に、扉がバン! と開いた
「今回はまた、すっげぇ古い時代に来たみたいだな」
「列車もない時代みたいだし……。はやく謎エネルギーを集めないと」
 そう声を掛け合う二人は、以前に時空列車の謎解きで出会ったケイとカレンだ! 私は歩き出そうとする二人の腕をつかんだ!
「うわっ! なんだよ急に! ……って」
「あなたは、あの時手伝ってくれた……」
 二人もわたしのことを覚えてくれていたようだ。
「あんたも時間移動ができたのか?」
 ケイの質問に、わたしは首をブンブンと横に振る。
「だよね。そもそも、時空列車に乗らないと時間移動なんてできないはずだし。……ケイ、実はまた招待状を落としたりしてないよね?」
「ちゃんと持ってるよ! そもそもこの人は列車に乗ってないし、最後は見送ってもらっただろ」
 ケイとカレンにも、なぜわたしがこの時代にいるのかわからないようだった。わかるとすれば、彼ぐらいだろうか。
わたしがそう考えたとき、
「いやはや珍しい。時空のはざまにでもまきこまれましたか」
 後ろから急に声をかけられて、心臓がびくりとはねた。
 ふり向いた先には、相変わらず深い夜のようにまっ黒な服を着た車掌が立っていた。
「どうやら帰る方法が思いつかないご様子。わたしが力になれるかもしれませんよ」
 目ぶかにかぶった帽子の奥で光る目は、とてもあやしい。でも元の時代に帰るには、彼を頼る以外の方法がなかった。うなずくわたしに、車掌は楽しそうに声を上げた。
「ふむ、よろしい! 狙った時代に行くには、ただの謎エネルギーでは足りません! 元の時代に帰りたいなら、あなたには特別な謎エネルギー……この時代に住まう神様から謎エネルギーを集めていただきましょう!」


ストーリー その1:神楽広場掲示板のパネル(神様のことば②)

「神様の謎エネルギーって……そんなもん、どこにあるっていうんだよ!」  車掌の言葉に、ケイがかみつくように言った。たしかに、それがどこにあるのか見当もつかない。しかし、車掌は楽しそうに言葉を続ける。
「いえいえ、問題はありませんよ。まずはこれを」
 車掌から渡されたのは、折りたたまれた地図と5×5のマス目が書かれたメモ用紙だ。でも、それだけではどうしようもない。すると、車掌はこう続けた。
「あなた、右のポケットにいいものが入っているでしょう?」
 指をさされたわたしは、右ポケットに手を伸ばす。そこには、課外授業で使ったメモがいくつか折りたたまれており、いつの間にか文字が書かれていた。
「あなたは運がいい、それをヒントに謎をとけば、きっと道は開けるでしょう」
 はたして、わたしにできるだろうか。そう不安になっていると、
「なら、さっさと行こうぜ!」
「あなたなら、きっと大丈夫。この前助けられたわたしたちが言うんだから、絶対大丈夫よ!」
ケイとカレンの明るい声が響いた。
 わたしは、二人の笑顔を見て決意した。
「いいよ、やってやる!」


ストーリー その2:本勝寺のパネル(神様のことば③)

「神様の謎、さすがに難しそうね」
「だな。気合いれてやらないと!」
 あたり前のようについてきたケイとカレンに、わたしはおそるおそるたずねた。
「二人とも、わたしの手伝いをしてよかったの? 二人は目的があって旅をしているのに」
 わたしの言葉に、二人は不思議そうに首をかしげた。
「この前、あんたはオレたちを助けてくれたじゃん」
「だから、わたしたちもあなたを助けるの。友達を助けるのは当然でしょう」
 迷いなく言う二人に、私はうれしくてたまらなくなった。いきなり変な時代に飛ばされて、本当はとても心細かったのだ。時空列車から下りてきた二人を見て、どれだけ安心したことか。
 二人は、わたしの手を引いた。
「行こうぜ! あんたとなら、神様相手だってなんとかできるさ」
「あなたの力、期待しているんだから!」


ストーリー その3:善妙寺のパネル(神様のことば④)

「ところで、敦賀の神様ってどんな神様なのかわかります?」
 カレンの問いかけに、私はポケットからメモを広げる。後ろから二人がそれをのぞき込んできた。
「あんた、準備がいいな」
「今日は、たまたまそういう授業だったから。神様神様……っと」
 ページをめくっていくと、いくつかの神様が紹介されていた。
「なになに、伊奢沙別命(いざわけのみこと)様。食物をつかさどり、海の交通や農業に関する神様だってさ」
「あとは、仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)様ね。無病息災(むびょうそくさい)の神様らしいわね」
「それに、神功皇后(じんぐうこうごう)様っていう、安産に関する神様もいるみたい。あ、でも言い伝えだと勇ましいエピソードが多い神様だ。知らなかったなぁ」
 自分が住んでいる町なのに、意外と知らないことが多い。
周りに歩いている人たちを見ると、多くの人が氣比神宮へ向けて手を合わせてお祈りをしている。
「このころの人たちって、とても神様を大切にしているのね」
「だよなー。オレたちの時代じゃ、ここまでていねいに手を合わせたりはしないぜ」
 二人の意見に、わたしもうなずく。
「二人は、いろんな時代を旅してきたんでしょ? ほかの時代はどうだった?」
 二人は、少し考えるように口を閉じてしまった。時空列車については言えないこともあるみたいだから、いろいろ考えているのだろう。
「それこそ場所によるけれど……古ければ古いほど、神様は大事にされていたと思うわ」
 カレンは確かめるように、そう言った。
「だなー。船乗りとかはさ、荒っぽいけど海に出るときはすげぇ真面目に祈るんだぜ! 航海がうまくいきますようにって」
「逆に、科学が進んだところはあんまりって感じだったわ」
 そう言いながら、二人は周りの人にならって手を合わせる。その姿を見て、わたしも自然と手を合わせていた。


ストーリー その4:アナライザーのモニュメント(神様のお告げ)

三人は、頭をつきあわせてなやんでいた。
「ヒントは集めたけど……神様にはどうやったら会えるんだ?」
「氣比神宮を歩きまわれば会えるかな?」
 わたしの問いに、カレンは首を横に振る。
「難しいんじゃないかな。神様に簡単に会えるとは思わないし。そもそもお話を聞いてくれるかな」

『私たちの力が必要なのですね――』

 突然、声が聞こえた。それは、頭の中に直接ひびくように聞こえてくる。
 あたりを見回しても人の姿は見えない。

『――力を欲するなら、こちらに来なさい。待っていますよ』

その声と同時、集めていたことばが、ある方向を示す。
「神様がわたしたちを呼んでいる?」
「……とりあえず、行けば会ってくれそうだな」
ケイとカレンの言葉にうなずき、わたしはこぶしを振り上げた。
「行こう! 神様のところへ!」


ストーリー その5:芭蕉像(神様のことば⑤)

 神様のことばが示した場所には、神々(こうご)しい光を放ちながら、何かがたたずんでいた。
『ふむ、来たか』
 その声は、わたしたちをここへさそったものだった。
「あなたは……」
『我は仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)。ここにまつられる神が一柱(ひとはしら)よ』
 わたしは、さっき読んだメモの中身を思いだした。それは、ケイも同じだったようだ。
「それって、無病息災(むびょうそくさい)の神様!」
『ふむ、幼いのになかなか勉強しておるではないか。そちらのおかげかな、時空の迷い子よ』
 仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)様は、わたしをそう呼んだ。
「わかるの?」
『わかるとも。帰るために、あの不思議な舟に使う力を探しに来たのだろう』
 舟とは、きっと列車のことだろう。わたしは大きく首を縦に振る。
「いただけるんですか?」
『ただとはいかぬ』
「なんだよ、ケチ!」
 わたしとカレンは、あわててケイの口をふさぐが、神様は楽しそうに大声で笑った。
『おもしろい! 謎エネルギーを使いたいのであれば、その資格があるか……それなりの知恵を示してもらおう!』


ストーリー その6:神水苑(神様のことば⑥)

 仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)様の謎を解いた先。そこにあらわれたのは、(りん)とした雰囲気をもつ女性だった。
「あなたが、次の神様ね」
仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)様の謎をといたのね。なかなか見どころのある子どもたちじゃない』
 ゆかいだわと笑う神様は、カレンの頭をわしゃわしゃとなでる。カレンは頭を揺らされながら、神様にたずねた。
「神様、名前をお聞きしても?」
『わたしの名前は、神功皇后(じんぐうこうごう)。この神社では安産や武運長久(ぶうんちょうきゅう)を司る神様よ』
 言い伝えのとおり、迫力のある神さまに、三人は少しだけたじろいた。
『そんな様子でわたしに資格を認めさせられるのかしら、わたしはあまくはないわよ?』
「わたしたちは、勝ちます」
 そう言い切ったのは、カレン。私たちの手をぎゅっと握りながら、大きな神さまを見つめかえした。
『……いい意気ね。その力、示してみなさい!』


ストーリー その7:兒宮(神様のことば⑦)

 そこには、清らかな空気が流れていた。
 静かな場所で、空中に座るようにその神様は浮いていた。
『いらっしゃい。よく来ましたね』
清らかな声が、頭にひびく。
「あなたは、伊奢沙別命(いざわけのみこと)様?」
『ええ、この地にまつられる一柱(ひとはしら)です。遠慮はいりません、近くに来なさい』
 ゆっくりと進む。普段はさわがしいケイですら、雰囲気のせいか静かだ。
仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)神功皇后(じんぐうこうごう)の謎をときましたか、よくぞここまで。道に迷って不安な中、がんばりましたね』
 うれしそうに笑う伊奢沙別命(いざわけのみこと)様。わたしは神秘的な雰囲気に緊張しながらも、勇気を出して問いかける。
伊奢沙別命(いざわけのみこと)様。なぜ、このような謎かけをしたのですか?」
『神様の力は、あなたたちが思っているよりもずっと強い力です。その力を悪用されれば、多くの人たちが困るでしょう。だからわたしたちは、あなたたちを見極めたかった』
 伊奢沙別命(いざわけのみこと)様はすっと立ち上がり、その美しい姿のまま告げた。
『これが最後の問いです。さぁ、わたしにあなたたちのすべてを教えてください』


エピローグ:ゴールのアタッシュケース内のパネル

『よくやりましたね――合格です』
 伊奢沙別命(いざわけのみこと)様はそう言うと、本当にうれしそうに私たちを見て笑っていた。
『ほぅ、伊奢沙別命(いざわけのみこと)様の試練も乗り越えたよったか』
『だから申し上げたでしょう! この子たちは見込みがあると!』
 そこに仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)様や神功皇后(じんぐうこうごう)様も加わり、わたしたちを祝ってくれた。
『さて――仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)神功皇后(じんぐうこうごう)。最後のひとしごとです。この子たちが無事目的の場所へとたどり着けるように』
『ああ、我はひさしぶりに気分がいい。手伝おう』
『力をまとめればいいのでしょう? まかせて』
 神様たちはそういうと、集めたエネルギーに手をかざす。そうすると、三つの力は糸のように混ざり合ってひとつになっていく。
 三つの光がくるくると集められていく不思議な光景を、わたしたちは我を忘れてながめていた――。
 やがて、私の手にその美しい光が収まった。

『行きなさい、時空の迷い子』
『お前たちは、その知恵と力を我らに示した』
『その旅に、幸多からんことを』

 神様から謎エネルギーを授かったわたしたちは、時空列車の元へとたどり着いた。
 わたしが謎エネルギーを渡すと、車掌は驚いたように目を開く。
「まさか本当に神様から謎エネルギーを集めてくるとは。」
「へっへー、どんなもんだい! オレたちが力を合わせれば、こんなもんだ」
 自慢げなケイとは逆に、カレンは深く息をはいた。
「わたしはもうクタクタよ……。神様に会うなんて、緊張しすぎてどうにかなっちゃうかと思った」
「その割には、勝ちます! なんて言い切ってたじゃねぇか、カレン」
「ケイこそ! 神様にケチ! とか言った瞬間は、寿命が縮んだわ……」
 二人はにらみ合ったあと、どちらからともなく笑い出した。わたしもつられて笑い出す。今回の謎解きも、終わってみればとても楽しかった。
「さて、わたしはこのエネルギーを時空列車に補充してきましょう。本来は招待状を持たない方を列車に乗せたりはしませんが、今回は特別です。このエネルギーを運賃としてあなたを元の世界まで送り届けましょう」
「やったぜ! 短い間だけど、これで一緒に時空列車で旅ができるな!」
「早く行こう!」
 ケイとカレンに連れられて、ついにわたしは時空列車へと乗り込んだ。
 しばらくすると、例の汽笛の音が鳴り響く。そして時空列車は空へとゆっくりと走りだしたのだった――。